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四章 「『幸せ割引』②〜高額とされるお買い物〜」
Last Updated:
2025-09-02 04:31:08私たちは、カラオケの自分たちの部屋に着いた。
カラオケの部屋は結構広いけど、私たちはいつもぴったり隣同士に座る。そして、いつも片手を繋ぎながら歌を歌う。
私は高額とされるお買い物について、頭の中で思い出してみることにした。
高額とされるお買い物は、その物によって割引率が違う。
でも、世の中に高額とされるものは、そこまで多くはない気がする。
私はいくつか例えを思い出してみた。
車の購入の場合は、ピンクは二割引き、イエローとグリーンとブルーは一割引きとなっている。車の購入だけがなぜか割引率が他のに比べてかなり低いからよく覚えている。
また、家の購入の場合は、ピンクは六割引き、イエローは三割引き、グリーンは二割引き、ブルーは一割引となっている。
ちなみに家を賃貸として借りた場合の家賃も『幸せ割引』が適応され、『幸せ度合い』が高いほど同様に安くなる。
私たちは家を購入するかアパートを借りるかのどちらにしようかと考えた時、六割引きという驚きの割引率に惹かれて思い切って家を購入をした。
もちろん、一括でなくローンで購入した。このローンの利息までも、『幸せ割引』が適応されることには私もさすがに驚いた。
「穂乃果？」
彼にそう声をかけられて、ハッとした。
私はあることにたいしてよく集中しすぎるところがあるらしい。自分ではわからないけど、たまに急に声をかけられてびっくりする時があるから。
私は頭を左右に振り、机の上にあるタブレットで真っ先に採点モードを入れた。
それはいつも私がしていることだ。彼がしてくれる前に私が先にしたいと思う。
歌って高い点数が出ると気持ちがいいし、点数の高さで彼と勝負するためだ。
私は一曲目に何を歌おうか考えた。
一番最初に点数が高くとれると、その後も楽しく遊べることが多いから一曲目は大事なのだ。
彼は「穂乃果が、先に曲を入れていいよ」といつも言ってくれる。
私は、歌う歌が決まり、歌い始めた。
これは私もいつもしているけど、歌い終わると彼が小さく拍手をしてくれた。私たち二人はハイテンションではしゃぐタイプではないから、これぐらいがちょうど心地がいい。
点数はなかなかよくて、私はまた気分が上がった。
それから交互に歌を入れながら、歌っていった。
彼の声は男性にしたら少し高い。でも、女性の歌も普通に歌えるのはすごいなといつも感心する。
私は女性として普通ぐらいの高さの声だし、そんなに声の高さの調整もできない。だから、男性の歌はうまく歌えないから女性の歌しか歌わない。
さらに、私たちは一曲の歌を一パートずつ交互に歌ったり、何曲か交互に歌って合計得点を競ったりする採点モードもした。
二人で競っていても、彼の点数が高いとつい私までも嬉しくなる。
彼が嬉しいことは、私の嬉しいことでもあるから。
彼は基本的に私のしたいことを第一に優先にしてくれる。
なんだかそれはこそばゆいし、どうしてそうしてくれるのかわからないけど、私は嬉しいといつも感じている。
でも、楽しまなきゃとわかっているのに、私はどうしてもさっきの事が忘れられなかった。
私は予想外のことが起きると、すぐに対応できなくて固まってしまうことが多い。
そもそも、自分自身の『幸せ度合い』がなぜピンクなのかもよくはわかっていない。
でも、あの時すぐにちゃんと対応ができなかったと自分を責めた。
自分を責め出すと、その感情で頭の中がいっぱいになった。
一人でどうにも考えがまとまらかったので、彼にさっきのことがまだ気になっていることを素直に話した。
本当は彼に頼らず、一人で頭の中を整理したかった。でも、それはできなかった。
今を楽しむために彼に話してみた。とにかく私はこのもやもや感をなくしたいから。
彼は少し考える様子を見せてから、「穂乃果には足りないと感じたかもしれないけど、あの対応はおかしくなかったよ」と言ってくれた。その理由もしっかり丁寧に教えてくれた。
どうしてかはわからないけど、彼にそう言ってもらえると心が少し落ち着いた。
まだ完全には気持ちは落ち着いていないけど、話す前よりはかなりよくなった。
完全に気持ちを明るくするために、私はさらに『幸せ割引』について考えてみることにした。
他にももっとたくさんのことがあるから。
それに、さっき考えていい気分になったから。
だから、もっと考えてみようと思った。
『幸せ割引』には、単なる物の割引だけでなく、『幸せ度合い』によって社会的に優遇されることもある。
社会的に優遇されることは、日常生活において結構大切なことのような気がする。
具体的にはどう大切かは、うまく言葉にできないけどそんな風に感じている。
そのことを思い出すと、もっと知りたいという思いが急に強くなった。後でなく、また今度でもなければ、今知りたい。
そんな気持ちを抑えられなかった。
だから、カラオケ中も考えは止まらず、『幸せ割引』の内で優遇されることについて思い出していた。
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